@article{oai:rissho.repo.nii.ac.jp:00002834, author = {小畑, 二郎 and Obata, Jiro}, issue = {3/4}, journal = {経済学季報}, month = {Mar}, note = {J. R. ヒックスは,ケインズ『一般理論』の書評論文「ケインズ氏と古典派」(1937 年)において,いわゆるIS-LM モデルを提案したが,それ以前に,1935年の論文「貨幣理論単純化のための提案」の中で,ケインズの流動性選好理論とほぼ同様の理論を公表していた.この論文の中で,ヒックスは,ケインズの『貨幣論』の中の流動性理論を発展させつつ,不確実性下の貨幣理論の分野では,貸借対照表の均衡について研究しなければならないことについて注意を促していた.また,金融市場の効率化につれて取引費用が減少する中では,投機的な機関投資家の行動が金融市場の均衡を攪乱し,金融市場を不安定にする危険があることについても指摘していた.このような金融市場の不安定性に関するヒックスの見解は,ケインズの流動性選好理論の発展であるとともに,ミンスキーの「金融不安定仮説」を先取りするものでもあった. この論文では,後期ヒックスの貨幣理論に関する理解に従って,ケインズ・ヒックスの流動性概念を再定義し,その再定義に従ってヒックスの「貸借対照表の均衡」について検討する.その際に,ミンスキー『ケインズ理論とは何か』の中のキャッシュ・フロー概念を参考にする.流動性とは,貨幣その他の特定の金融資産の分類項目としてではなく,すべての金融資産や実物(産業用)資産に関して,それらの管理・運用から期待されるキャッシュ・フローの流れについて測定するための時間尺度としてここで再定義される.これによれば,特定種類の資産に対する投資の決定から,その投資から期待されるキャッシュ・フローが実際に発生し,その流れが終了するまでに予測される時間が短いほど,その投資の流動性は高いと判断される.反対に,その時間が長いほどその投資の流動性は低い。そして,そのような流動性概念によって分類されるさまざまな金融資産と実物資産に対する投資の間に,期待収益率とリスクの観点から見て,最も効率的な一定の比例関係が保たれ,各経済主体がそれぞれ独自の経済成長を遂げることが,「貸借対照表の均衡」であると解釈される.実際にも,イギリスの商業銀行は,ケインズ『貨幣論』の中でも指摘されていたように,流動性の観点から見て多様な資産分類の間に一定の比例関係が保たれるように,金融資産の構成を調整してきたのである. このような解釈に従うならば,ハロッド・ヒックスの成長均衡(steady state〉についても,「貸借対照表の均衡」とともに整合的に理解され,また一つの均衡成長経路から別の均衡成長経路への移行過程(トラヴァース)に関する分析についても,金融的発展(金融フロンティアの拡大)と対応して理解されてくる.そして,そのような「貸借対照表の均衡」によって補完された均衡成長の分析は,金融経済の発展について歴史的に展望するための一つの参考基準(a standard of reference)として役立つ.このように解釈されれば,完全予測を前提とする動学的均衡モデルは,不完全予測によって引き起こされる現実の金融的発展と,それに伴って発生する金融的不安定の基準として役立ち,また多時限的な金融政策の効果を判定するための参考基準とされるであろう.}, pages = {1--26}, title = {ケインズ・ヒックスの流動性理論と金融不安定仮説}, volume = {65}, year = {2016} }